3日間のツアーも、あっという間に最終日。もうすでに郡上八幡と石徹白を満喫した気持ちになっていた私たちですが、この日もまだまだ大事な行程が残っています。
まずは朝、早起き出来た方はスキー場跡の斜面を登り、眼下に広がる石徹白の姿を見にいきました。こうして自分のいる場所を一望できる機会も案外珍しいものです。
井普請(地域の共同作業)への参加
ツアー2日目で、石徹白の小水力発電が地域を上げての取り組みであることが分かってきたので、最終日はその秘密をさらに深く知るべく、地域の共同作業である井普請に実際に参加させていただくことになりました。
もうすっかり仲良しのツアーメンバー。3日前までは皆さんお知り合いじゃなかったとは思えないほど和気あいあい。(※軽トラには、停車しているところにただ乗っているだけですのでご心配なく)
この日の共同作業は、小水力発電に利用する水路のお掃除。冬の間に落ちていた枯れ葉や枝、土などを手作業でかきだしていきます。
子どもも大人も一緒に作業をします。こうした地域の共同作業が残っているということも、小水力発電施設が誕生した大事な背景の一つです。
これまでに受けた恩を返すべく、汗だくで作業をされた参加者の皆さん、お疲れ様でした!大事な地域の行事に参加させていただき、石徹白の皆さんに本当に感謝です。
石徹白の魅力は、その自立の精神に起因するものが多くありますが、地域の中にはこうした助け合いの文化も同時に息づいています。各々は自立しているけれど、1人で出来ないことは皆で助け合う。素直に素敵な風土だなと思います。
石徹白洋品店で藍建ての作業
さて、今日はもう一つメインイベントが。それが今回のツアー参加者の中でも楽しみにされていた方が多くいた「石徹白洋品店」への訪問です。
石徹白の伝統的な野良着をベースにした服作りをされている石徹白洋品店さん。衣服の他にも、地域の文化や伝統を引き継ぎ、継承していく様々な取り組みを進めていらっしゃいます。今回はなんと、藍染めをするための仕込みである「藍建て」という大変大事な作業を一緒に行っていただけることになりました。
そんな有難い機会をいただいてしまって良いのでしょうか…と思う間もなく、早速盛り上がっている皆さん。
これが徳島から仕入れたという「すくも」。乾燥させた藍の葉を、何日も水を打ったり切り返したりして発酵させたもので、簡単に言うと藍の葉を腐葉土化させたようなものだそうです。
この「すくも」を作る技術は非常に難しく、職人さんも少なくなっているのだとか。石徹白洋品店さんでは、現在お店の前で自分たちで藍を育ていて、いずれこの「すくも」自体もこの土地で作れるようにしようと取り組まれています。
その「すくも」に熱々に熱した灰汁を入れて
新しい長靴を履いて、踏みながら練っていきます。
灰汁は1番灰汁から5番灰汁までを使うのだそうで、じつはこの日が来るまでの間に5日間もかけて用意をしていただいていました。その作業だけでも大変そうです。
みんなで交代しながら練り練り。今回は、福井県大野市の藍染職人である皆藤さんにもお越しいただいたので、貴重なお話を伺いながらの作業でした。
皆藤さんの手がとても格好良かったです。
続いてこの練ったものを甕の中に仕込んでいくのですが、その前に…
甕の中を綺麗にしておきます。
この甕がまた大きくて
人一人がすっぽりと入れてしまうほどの大きさ。
店主の平野馨生里さんと、藍染め職人の皆藤さんのお二人による贅沢なレクチャー。最後は皆藤さんの職人の経験による判断で調整をしていただき、今日の仕込み作業は終了。
これから、この甕の中を4時間おきにかき混ぜるという大変な作業が残っていますが、それは馨生里さんにお任せすることになります。それにしても藍染めは始めから最後までずっと手間がかかるものなのだということがよく分かりました。
*ご参加の皆様へ。この数日後、無事に藍が建ったそうです!
ふと見ると、男性陣は畑仕事のお手伝いを率先して行っていました。石徹白に伝わる自立の精神、どうやら私たちにも伝わってきたようです。
改めて馨生里さんに石徹白洋品店や藍染めについてのレクチャーを伺ったところで、調度お昼の時間になったので、少しだけ場所を移動。
訪れたのはMagoemonさん。スーパーもコンビニもない石徹白に、2017年11月にオープンした飲食店。人口270人の集落にカフェを作ったというのですから、この挑戦にも一同脱帽でした。
注文したのはカレー。これまたとっても美味しかったです!夜は居酒屋としてオープンしており、焼き鳥が評判なのだとか。
お腹が満ちたところで、また石徹白洋品店さんに戻ってきて、今度はお買い物タイム。
皆さんがよく注目していたのはやっぱり「たつけ」。農作業用に股に余裕をもった作りをしているズボンで、普段着でもおしゃれに着こなすことが出来るようにデザインされています。一枚の布を全て直線断ちして作ることが出来、生地の余りを出すことがないという、昔の方の知恵が表れた野良着ズボン。最後の最後まで石徹白には興味が尽きません。
建物の作りも興味深く、平野さんがずっと住みたかったという古民家が解体された際に譲り受けてきた古材と、天然素材の新しい材を組み合わせて作られています。
黒い材に縦の筋が見えますが、これは昔この木をマサカリではつった痕なのだとか。
釘を使わずに建てられているので、もしここに住めなくなっても、まだ使える材をバラしてまた新たな建造物に再利用することが出来るのだとか。建物も本来は時間を越え、形を変えて次に引き継いでいくことが出来るものなんですね。
これは「石場建て」といい、なんと石の上に柱が乗っているだけの作り。現在では、コンクリートの基礎の上に土台を敷く方法をすぐに思い浮かべますが、かつてはこの石場建ても普通の構法であったのだといいます。こう見えて、ちゃんと耐震性もあるのだとか。
水路掃除から藍建て、石徹白の伝統衣服、建物のことまで今日も盛りだくさんの行程を満喫して、最後に忘れず記念撮影。あまりに居心地が良いので、まだ滞在していたいですが、私たちにも自らが住む場所があります。名残惜しい気持ちを抑え、これで石徹白ともお別れとなりました。
旅の定番。いつまでも手を振りあう皆さん。石徹白のみなさん、本当にどうもありがとうございました!
ということで、3回に渡るツアー報告もようやく終了です。今回はスローツアーにとっても船出となる第一弾の企画でした。持続可能な暮らしを訪ねる旅・スローツアーを暖かく受け入れてくださった郡上八幡と石徹白の皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。
そして、参加者の皆様の明るく前向きな気持ちに支えられて終始楽しく交流しながらツアーを行えたことに安堵しています。第一弾を信じてお越しいただいた皆様、本当にどうもありがとうございました!
今回のツアーで得た繋がりや学びを、自分たちの暮らす場所ではどのように実践することが出来るのか、そこに思いを馳せるまでがツアーの目的地です。それぞれの立地条件や歴史文化背景に見合った、実感のある確かで楽しい暮らしとは何なのか、これからも皆さんと一緒に考えていければ幸いです。
今回はツアー報告に終始する形になりましたが、このツアーを受けて感じたことをシェアする時間もいつか作ることが出来ればと思っていますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
とにもかくにも、本当に楽しい3日間でした。全てのことに感謝!
*ツアー3日目のこと、もっと知りたい方はどうぞ下記をご覧ください。
・「暮らし」を中心に、誇りをもてる仕事をつくる。山奥で営む「石徹白洋品店」が描く、きちんと腑に落ちる幸せな暮らしかた(greenz.jp)
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