2018-09-24

会津漆器の職人さんを訪ねて スローツアー×テマヒマうつわ旅(漆とロック株式会社)

スローツアーでは、これからの生き方を考えるヒントとして、日本に伝わる文化に触れて知る機会を増やしていきたいと思っています。

そのうちの一つとして行ったのが、先日の「山の民『奥会津の木地師』上映会+うるしトーク」イベント。(*イベント報告 https://slow-tour.net/2018/09/03/report/694/ )

漆とロック株式会社さん全面協力のもと、本当に素晴らしい時間を過ごさせていただきました。暮らしの中で漆器を手に取るということがどのようなことなのか、古くからの日本の暮らしとはどのようなものだったのか、そしてこれからの私たちの文化はどうあって欲しいのかなどなど、様々なことに思いをはせる時間となりました。

そして、その関連企画として行ったのが、漆とロック株式会社さんが企画する「テマヒマうつわ旅」とスローツアーのコラボツアーです。

漆とロックの貝沼さんが丁寧に信頼関係を築いてきた会津漆器の職人さんたちを訪ねながら、何人もの職人さんたちの手を経て、漆器が出来るまでを知る2日間。これまた本当に素晴らしかったので、その時の様子をこちらでご紹介させていただきます。

・テマヒマうつわ旅: http://tematrip.com/

***

まず伺ったのが、御蒔絵「やまうち」さん。

蔵の中に工房があります。素敵な入口です。

さっそく蒔絵師の山内泰次さんにお話を伺いました。

山内さんがまず見せてくれたのが、この「蒔絵筆」。

この写真のなかでも特に細い筆、これはカヤネズミの毛で出来ているそうですが、なんとそのなかでも脇の毛と首の後ろの毛だけを用いて作られているのだといいます。

続いてこちらは漆を塗るための刷毛。

こちらは人の髪の毛を使って出来ているそうですが、現在の日本人は染色をしたりパーマをあてたりするので、いまはモンゴルの方の髪の毛などを使って作るのだそうです。昔は日本人でも海女さんの髪の毛が潮で油分が取れるため適していたのだとか。

というような、とても興味深い話から始まりましたが、蒔絵師の山内さんがまずはじめに道具の話をしてくれたのには理由がありました。じつはいま職人や技術だけではなく、職人が使う道具を作る人も少なくなってしまっているのだそうで、もしこのまま道具を作る技術が失われてしまえば、それを用いて作品を作る塗師さんも仕事を出来なくなってしまうという、あまり知られていない差し迫った状況があるのだそうです。

これが山内さんの作品。きらびやかなのに、全体として見ると落ち着いた雰囲気を醸し出されているのがとても魅力的でした。

漆に顔料を混ぜたものと

金粉を使って、蒔絵を描いていくそうです。

熟練の手つきにしばし見惚れる私たちでした。

いきなり素晴らしいお仕事を目の前で見させていただき大感激のまま、次にお話を向かったのが漆掻き職人の秋葉良榮さん。

到着するやいなや、さっそく漆掻きを見せてくれる秋葉さん。

この専用の道具を使って(この道具を作る職人さんもまた減っているそうです)

幹に傷をつけると

樹液が滲みでてくるので

それをサッとすくいとっていくという手順です。

いとも簡単にやっているように見えますが、この傷一つからにじみ出てくる樹液の量は本当に少なく、1本の漆の樹からは、わずか200ml(牛乳瓶1本分)程度の樹液しか取れないのだといいます。

およそ15年ほど育った漆の樹から樹液を取るのが良いのだそうで、樹液を取ったあとはそのまま切り倒してしまうのだそうです。これだけ聞くと少々勿体なく感じてしまいますが、漆とロック貝沼さんより「この15年という時間は、日々漆器を使ったとすれば、ちょうど塗り直しが必要になってくるタイミングにあたる」という補足を伺い、なるほど、よく出来ているもんだとこれまた関心の私たち。

また、「漆器そのものは使い方によって100年~200年使えるが、この100年という時間軸も、ちょうど森が循環するサイクルとタイミングが合う」と貝沼さんからさらに教えていただき、地球のリズムとともに使うことが出来るのが漆器の魅力なのだということをよく理解することが出来ました。

これが今シーズンに秋葉さんが取った漆の樹液の一部。これだけ集めるのにどれくらい時間がかかっているのだろう…とため息ものでした。

秋葉さんは塗師さんでもあるので、その時の様子も見させていただきました。

漆掻き同様、どうにも簡単そうに見えてしまいますが、これも簡単には真似できない熟練の技です。

これで、蒔絵師さん、漆掻き職人さん、塗師さんのお仕事を見させていただきましたが、漆器はそれぞれの職人さんが分業して自分の仕事をおこない、互いに関わりあいながら一つの漆器を完成させていきますので、最後に漆器の土台となる木地を作る職人さんのもとへ訪ねることになりました。

ということでやってきたのが三浦木工所さん。

木地師の三浦圭一さんが、ろくろを使って椀の形を作っていくところを見させていただくことに。

荒形(あらがた・原木から荒挽きした椀のこと)をろくろにセットし、専用のカンナで削っていきます。

時折りカンナを研ぎながら作業をされていました。漆器の土台である木地を作る大事な仕事です。

この様子だけでも十分に感動だったのですが、このあとにご案内いただいた場所でビックリ仰天。

なんとたくさんの荒形が…!

ここは荒形を乾燥させ、保管しておくための場所なのだそうですが、三浦さんは乾燥機などは使わず自然乾燥にこだわっているのだといいます。なんでも、時間をかけて乾燥させた方が長持ちし、カンナをかける際にゆがみや割れが出にくいのだとか。

それにしてもこの数、全て三浦さんが作ったのでしょうか…?という疑問が出てきますが、いまここにある荒形は、三浦さんの父・祖父が作られたものだそうです。いま三浦さんは先代が作っておいてくれた荒形を使って椀を作り、同時に自分の子どもの代が使えるように荒形作りも行っているのだといいます。

その技術もさることながら、漆器が出来るまでの時間の捉え方に感動を覚えた私たちでした。

順番に並べると、椀の形を作る木地師さんがいて、そこに塗る漆を掻く職人さんがいて、椀に漆を塗る職人さんがいて、そこ蒔絵をほどこしていく職人さんがいるというように、いかに漆器が多くの職人さんの手を渡り作られてきているのかがよく分かった2日間でした。

漆器のことは本当に興味のあることばかり。引き続きスローツアーでもうるし関連企画やツアーなど企画したいと思っています。

今回訪れさせていただいた職人の皆様、そして全面的にコーディネートしてくれた漆とロック(テマヒマうつわ旅)の貝沼さん、本当にどうもありがとうございました!


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